「相撲 = 日本の国技」と思われている方が多いかと思いますが、正式には相撲は国技ではありません。
一般的に日本の国技とされているスポーツが相撲なだけであって、国が公式に(法的に)に認めているものではないのです。(加えて言うなら、日本には公式の国技は存在しません)
ただ、古くから行われている日本由来の競技であるという点では他のスポーツと一線を画しているため、相撲 = 国技と捉えても構わないとは思います。
そんな歴史ある相撲というスポーツは、力と技がぶつかり合う「個人戦」で行われる競技です。
それを「高校生の部活 + 団体戦」とすることで名作少年漫画に仕立て上げたのが、今回紹介する「うっちゃれ五所瓦(ごしょがわら)」。
今回の記事では、名作相撲漫画・うっちゃれ五所瓦のおすすめポイントを紹介していきます。
この漫画の連載開始の少し後に「若貴ブーム」が起こったのは、単なる偶然?それとも……。
※ 若貴ブームを知らない人は、お父さんかお母さんに聞いてね。
うっちゃれ五所瓦の作品データ
【作品概要】
廃部寸前の武蔵山高校・相撲部。
たった1人の相撲部員・五所瓦角(ごしょがわら かく)は、高校最後のインターハイ予選が迫るなか部員集めに奔走します。
そう、最後の大会の「団体戦」で優勝するために。
【作品データ】
作品名 | うっちゃれ五所瓦(ごしょがわら) |
作者 | なかいま強 |
連載誌 | 週刊少年サンデー(小学館) |
連載期間 | 1988年(昭和63年)~1991年(平成3年) |
単行本 | 全12巻(文庫版・ワイド版:全6巻) |
電子書籍 | あり |
うっちゃれ五所瓦のおすすめポイント①(単なる相撲漫画ではありません)一部ネタバレあり
それでは最初に、本作「うっちゃれ五所瓦」のストーリー&構成を紹介していきます。
かつて高校相撲界の名門だった武蔵山高校相撲部。
しかし現在は、3年生の五所瓦 角(ごしょがわら かく)1人だけの部活になってしまいました。
五所瓦が卒業した後に相撲部を引き継ぐ後輩がいない現状では、廃部は決定的。
そんな状況で高校最後のインターハイ予選を目前に控えた五所瓦は、ある決意をします。
廃部となる相撲部の最後の大会を「団体戦優勝」という形で締めくくって花を添えたい…。
インターハイ予選まで残り半月。
五所瓦は1人で稽古をするかたわら、他の運動部に頭を下げ部員集めに奔走するのでした…。
本作「うっちゃれ五所瓦」は、全12巻のコミックスで構成される漫画です。
まず第1巻で、五所瓦が部員集めをし団体戦に出場できる4人(団体戦は5人のチーム)のメンバーを集める様子が描かれています。
続く第2巻(正確には第1巻の終わりから)では、最大のライバル校である黒島高校での出稽古(合同練習)の模様が描かれます。
そして、第3巻から第12巻(最後のエピローグを除く)までの10冊で、インターハイ予選の「たった1日」の戦いが描き出されているのです。
ですから、漫画としては珍しい構成の作品と言えるでしょう。
ま、スラムダンクでも最後の山王戦がコミックス6巻くらい使っていますので、スポーツ漫画では仕方ないのかもしれませんネ。
ただこれは、本作としてはとても惜しい部分でもあります。
このあと紹介しますが、五所瓦が集めた4人のメンバーは、個性的ではあるものの相撲に関してはまるっきりのド素人。
で、最期にはこのメンバーで団体戦優勝を成し遂げるのですが…。
ちょっと現実味がないんですね。
ご存知のとおり、相撲は相手を先に地面につけるか土俵の外に出したら勝ちになるというルール上は単純な競技です。
しかし「ずぶの素人がたった半月で他校の猛者たちに勝てるスポーツか?」
と言われれば、ふつう無理でしょう。
つまり、五所瓦率いる素人チームが優勝するに足るメンバーだという根拠が乏しいのです。
メンバーたちの練習風景が実質的に第2巻でしか描かれていないため、五所瓦を除く他のメンバーが強いのか弱いのか分からないんですね。
せっかく個性的なメンバーが揃っているのですから、もう少し一人ひとりにスポットを当てて、「強くなっていく過程」を描くのに話数を費やしても良かったのではないか?と思えました。
なので、本作の相撲そのものにあまりリアル感はありません。
「本格的相撲漫画」と思って読まないほうがイイでしょう。
ではなぜ本作が名作と評されているのかと言うと。
第3巻からのインターハイ予選編を、「相撲漫画」ではなく「異種格闘技ギャグ漫画」として描ているからなんです。
相撲漫画だから相撲を描かなきゃという枠にとらわれず、相撲 + 格闘技 + ギャグを融合させたことに本作の面白さが凝縮されていると言ってイイでしょう。
そしてこの異種格闘技ギャグ漫画を作り上げているのは、次で紹介する個性的な5人のメンバーに他なりません。
うっちゃれ五所瓦のおすすめポイント②(武蔵山高校相撲部のメンバー)一部ネタバレあり
先ほど述べたとおり、本作の魅力は個性的な5人の武蔵山高校相撲部員が展開する「異種格闘技バトル」&「ギャグバトル」にあります。
もともと相撲部員である五所瓦を除く他の4人のメンバーはこんな感じ。
- 元高校柔道日本一
- 元レスリング部のプロレスラー志望
- 硬派大好きな元応援部
- 元囲碁部のデブ
作中での役割もそれぞれ決まっているので、彼らの紹介とともにどのようなバトルを見せてくれるのか?についても紹介していきます。
五所瓦角(ごしょがわら かく)
5人の中で、唯一本格的な相撲を魅せてくれるのが「五所瓦 角」。
まぁ相撲部員ですから当然と言えば当然ですけど。
相撲を愛し武蔵山高校相撲部を一人で支えてきた彼は、本作の「相撲部門」も一人で支える男気あふれる主人公です。
寡黙で誠実、そして強いという「ドカベンの山田太郎」のような青年として描かれています。
相撲の実力は、現在の高校生No.1力士・黒島高校の田門(たもん)が「唯一恐れる存在」というくらいの強さ。
どんな相手であっても、全ての試合において「相撲取り」として戦う彼の姿が、本作を相撲漫画として認知させている要因でしょうね。
なお、本作のタイトルである「うっちゃり」が得意なわけではありません。
ではなぜ「うっちゃれ五所瓦」というタイトルが付いているのか?
それは、彼の最後の戦いで明らかになります。(感動しますよ~)
(©日本相撲協会/ハッキヨイ!せきトリくん)
清川薫(きよかわ かおる)
元武蔵山高校柔道部の主将で、高校生の柔道チャンプが「清川 薫」。
何度も頭を下げて勧誘に来る五所瓦と相撲部への入部をかけた勝負を行い、五所瓦の(相撲の)強さを認めて入部することになります。
相撲部と柔道部の掛け持ちという選択をせず、潔く柔道を捨て相撲道に打ち込む彼もまた、男気にあふれる高校生です。(見た目は、完全におっさんですけどね)
ただし、柔道のチャンプであっても相撲はド素人。
そのため試合では「柔道」で戦います。
一本背負い・巴投げなど、彼の戦いでは「柔道 VS 相撲」の勝負が描かれており、それでも勝ててしまうのが異種格闘技漫画の醍醐味ですかね。
五所瓦とともに、武蔵山高校相撲部の「白星」担当を担います。
関内孝之(かんない たかゆき)
元レスリング部1年生の「関内 孝之」。
1年生でレギュラーになるほどの実力を持っていますが、本人はプロレスラー志望のためアマレスはそのツナギとしてやっています。
格闘技(戦うこと)が大好きで、ちょっとレベルの低いレスリング部に物足りなさを感じ、相撲部の門を叩くことに。
(偶然、五所瓦の超人的な強さを目の当たりにして相撲部に入部することになります)
彼も相撲部の「白星」担当ですが、その戦いはプロレスそのもの。
ジャーマンスープレックス、バックドロップ、ラリアット、関節技など多彩な「プロレス VS 相撲」の異種格闘戦を見せてくれますよ。
両者反則負けという試合があったものの、実質的に1度も負けなかったのは五所瓦とこの関内くんだけですね。
インハイ予選が終わった後はプロレスの入門テストに合格し、念願のプロレスラーとして歩んでいくことになります。(高校は中退)
難野一平(なんの いっぺい)
「難野 一平」は、硬派な男に憧れる元応援部の1年生。
軟派な応援部に愛想を尽かせて相撲部に入部します。
相撲部の五所瓦と柔道部の清川との対決を偶然目撃した彼は、五所瓦の「硬派な心意気」に共感。
助っ人として相撲部に加入することになります。
ただし「自称」助っ人であって、作中では見事なまでの「黒星」担当として逆大活躍。
予選の1回戦以外は全て負けているのですが、それもそのはず…。
見てのとおり、彼は本作の「お笑い」担当だから。
およそ相撲とは縁遠いあばらの浮き出たガリガリ体形の難野くんの取り得。
それは「ハッタリ」と「姑息な手段」と「反則技」。
ですから、負けるべくして負けるキャラとして描かれています。
でも、この漫画における彼の本当の役割は「盛り上げ役」。
難野くんのようなキャラがいるのといないのとでは、作品のカラーが全く変わってきます。
本作を単なる「スポ根格闘技漫画」で終わらせないために、このようなキャラクターも必要なのですね。
そんなお調子者でハッタリ野郎の難野くんも、最後の戦いではちょっとだけ男を上げますよ。
雷電五郎(らいでん ごろう)
最後に登場するのは、メチャメチャ強そうな名前を持つ元囲碁部の2年生「雷電 五郎」。
江戸時代に、雷電爲右エ門(らいでん ためえもん)というメチャメチャ強い力士がいたのです。
「囲碁部にすごいデブがいる」と聞きつけた五所瓦たちは、その男を軽く拉致して半ば無理やり相撲部に入部させます。
体形と名前のわりに気が弱く、争いを好まない雷電くんでしたが、五所瓦の誠実さや男気に触れて徐々に相撲の魅力に引き込まれていきます。
しかし。
そこは囲碁が得意な単なるデブ。
そう簡単に試合に勝てるわけもありません。
前述した難野くん同様に「黒星」担当を担うことになると思われたのですが…。
意に反して、大会中3勝を挙げる活躍を見せ、相撲部の「金星」担当として貢献することになります。
さらに見た目は一番相撲取りらしい彼も、基本的には「お笑い」担当の一翼。
雷電くんは囲碁以外に得意な分野がないため、相撲においてはコレと言った特長のないキャラになっています。
そこで難野くんとコンビを組ませることで、その特長を引き出しているんですね~。(難野が授けた卑怯な作戦を、雷電が実行する)
この難野&雷電のコンビは、なかなか好い味を出していました。
特に最後の決勝戦で難野が考えた作戦は「お見事!」と言える出来ばえ。
強豪・黒島高の副将をあわやのところまで追い詰めます。(結果的には負けちゃいますけど)
このように、5名の個性的なキャラクターがそれぞれの得意技(相撲・柔道・プロレス・卑怯な手段など)を活かして対決する異種格闘技戦が本作のおすすめポイント。
また試合の相手となる他校のキャラクターも個性的で、しっかりと脇を固めてくれます。
- 身長2m超えの大男
- アルゼンチンからの留学生
- 関内の中学時代のライバル
- 黒島高校のダーティー監督など
それでもやっぱり最大の見どころは、最後の「五所瓦 VS 高校No.1力士・田門」の戦い。
かなり古い漫画なので、わたしも今回読み返してみるまでは途中の戦いなど覚えていない部分も多かったです。
ただ最後の五所瓦の戦いだけはハッキリと覚えていましたね。
それだけ「うっちゃれ五所瓦」を象徴する戦いと言ってイイでしょう。
この作品は、お色気要素も恋愛要素も全く無い、とにかく男臭い漫画です。
そもそも女性キャラが出てきませんから。
それだけに熱い男たちのバトルだけを楽しむという、漫画としての楽しみ方が決まっている作品でもあります。
その男たちの戦いが、読み終わったあとに得も言われぬ爽快感と感動をもたらしてくれますので、ぜひ男気あふれる男たちのバトルを堪能してくださいね。
さて、そんな本作「うっちゃれ五所瓦」は電子書籍化されています。
わたしがふだん利用している電子書籍通販サイト「ebookjapan(イーブックジャパン)」で試し読みが可能。
「うっちゃれ五所瓦」に興味を持たれた方は、下の公式サイトを覗いてみてください。
また、ebookjapan(イーブックジャパン)についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
よろしければ、あわせて参考にしてくださいね。
