重厚な世界観、深いストーリー、そして魅力的な登場人物。
どれを取っても「長く続ければもっと面白くなる」要素をふんだんに含んだ作品だったのですが…。
週刊少年ジャンプにて「9週打ち切り」という憂き目にあってしまいました。
今回は、そんなジャンプ史上に残る名作短編打ち切り漫画を紹介します。
それが「惑星(ほし)をつぐ者」。
おそらく、「ヤンジャン」辺りで連載されていれば「テラフォーマーズ」くらいの作品になったのではないかと思われるほどの名作スペースオペラ。
この「惑星(ほし)をつぐ者」のおすすめポイントを、今回の記事では紹介していきます。
惑星をつぐ者の作品データ
【作品概要】
自らの力で自分が住む惑星を壊滅させた主人公。
宇宙一の賞金首となった彼は、ある目的のためにある男を追っていた…。
週刊少年ジャンプ史上、最も面白い短期打ち切り漫画です。
【作品データ】
作品名 | 惑星(ほし)をつぐ者 |
作者 | 戸田尚伸 |
連載誌 | 週刊少年ジャンプ(集英社) |
連載期間 | 1995年(平成7年) |
単行本 | 全1巻 |
電子書籍 | あり |
惑星をつぐ者のおすすめポイント(もったいないポイント① 武器)
さて、本作「惑星をつぐ者」は宇宙を舞台にしたスペースオペラ(宇宙活劇)です。
物語の舞台となる宇宙では様々な種族が存在し、人間(人類種)は過酷な宇宙世界にあって「最も弱い存在」として位置づけられています。
主人公のバラダット・ナイブス(人類種)は、「マリス」という惑星の科学者。
弱い人類種がどんな過酷な宇宙環境にも適応できるようにするための「タフブースター(特殊細胞)」を開発します。
タフブースターは、人類種が宇宙環境で生き延びるための「希望」となるはずだったのですが…。
ある男が引き起こしたある大事件をきっかけに、ナイブスはマリス星の人類種を滅亡させざるを得なくなります。
結果、自身は宇宙一の賞金首となり、大事件を引き起こした張本人にも逃げられてしまうことに。
ナイブスは賞金首となりながらも、この男を追って宇宙を駆け巡る旅に出るのでした…。
これが本作の概要です。
これだけでも「SF冒険活劇」としてワクワクするような内容。
ただ、この作品には他にも重要なポイントが3つあります。
それは、もうチョット長く続いていればもっと面白くなるのにな~という「もったいないポイント」。
今回の記事では、この「もったいないポイント」を本作のおすすめポイントとして紹介していきます。
1つ目のもったいないポイントは、主人公であるナイブスが持つ「特殊能力」。
ナイブスは、自身が開発したタフブースターを自分の体に埋め込むことで、強靭な肉体と特殊な武器を手に入れました。
それがスパイラル・ナイフ(自在剣)と呼ばれる武器で、両手から光のようなものを放出し、あらゆるものを切り刻むことができる最強の能力です。
ナイブズは、このスパイラル・ナイフによって数億人と言われるマリス星の全人類を滅亡させました。
それほどまでに強力な能力は、太古から伝わる伝説の武器でもあります。
(©戸田尚伸/惑星をつぐ者)
まず、この能力の設定がとてもシンプルでクール。
なんでも切り刻める、というのが分かりやすくてイイですよね。
後半のほうではバリアのような感じで身を守ったり、敵の位置を教えてくれたりといった用途でも使われ応用力の高さも披露。
能力はシンプルだけど応用がきいて強いという点では、「ゴムゴムの実」みたいなもんですかね。
さらに「太古から伝わる伝説の武器」という部分も相まって、本当はもっと深い設定の能力だっただろうと思われます。
しかし。
全9話の内容では、そこまで作り込むのは無理でしたね。
元々の設定がシンプルなだけに今後いくらでも発展させられる能力は、もっと面白くできる可能性を持っていました。
ヒジョーに惜しいです。
この武器(能力)設定が、もうチョット長く続いていれば…という「もったいないポイント①」になります。
惑星をつぐ者のおすすめポイント(もったいないポイント② 仲間)
冒険漫画やバトル漫画に欠かせない要素として、主人公の「仲間」が挙げられます。
本作は、基本的に主人公であるナイブスが一人で闘う内容になっているのですが、物語の途中で「こいつら将来的に仲間になるよね」という仲間フラグの立った3人組が登場します。
それが、下図の3人です。
- 宇宙海賊のスピッドロウ(グラサン)
- ゾーイ(女性)
- メロウス(トカゲみたいなの)
(©戸田尚伸/惑星をつぐ者)
当初ナイブスの敵役として登場するこの3人。
ところが、最期のほうではナイブスの手助けをするシーンがあります。
主人公のキャラが「一匹狼」的に描かれているので、すぐには仲間にならないだろうとは思いますが、後々仲間になったら面白いだろうなと思わせてくれる3人組なんです。
最初は敵だったキャラが後に主人公の仲間になるのは、もはや少年漫画の王道と言っても良いパターンですもんね。
さらに、この3人のうち2人は特殊な能力を持っていることが描かれており、主人公の仲間になるのには十分なキャラ。
宇宙一の賞金首と宇宙海賊が仲間になって宇宙を旅する。
これだけでもコミックス5巻分くらいの内容は描けそうじゃないですか?
でも…。
残念ながら全9話の内容ではそこまで作り込むのは無理でしたね。
魅力的な主人公&魅力的な仲間というのはヒット作の条件なだけに、ヒジョーに惜しい。
これが、もうチョット長く続いていれば…という「もったいないポイント②」です。
惑星をつぐ者のおすすめポイント(もったいないポイント③ 伏線)
最後のもったいないポイントは「伏線」です。
本作は、宇宙を舞台にしたスペースオペラであると述べました。
一方で、「弱い人類種がいかにして宇宙で生き残るか?」という「種の絶滅と進化」という命題がストーリーの根底にあります。
そもそも主人公のナイブスが開発した「タフブースター(特殊細胞)」も、さまざまな種が生存する過酷な宇宙環境で、人類種が生き残るための手段の1つとして描かれています。
ですから単なるSF冒険活劇ではなく、根本には深いストーリー性も備わっている漫画なんです。
最終的に人類種がどのような進化を遂げて生き残っていくのか?を、作者である戸田先生は描きたかったんじゃないでしょうか。
まぁこうしたちょっと重く深いストーリーは、少年誌では受けないでしょうね。
しかし逆に言うと、だからこそヤンジャンなどの青年誌で連載したら受けたんじゃないかとも思うのです。
そして、本作の「人類種の絶滅と進化」に関する唯一の伏線として描かれているのが、罪人たちの住む流刑の星に暮らす少年。
この少年(人類種)は額に触覚のようなものが付いており、明らかに他の人間とは異なる能力を持っていそうな感じがします。
さらに、作中でハッキリと「人類を絶滅から救う少年」と語られているのです。
(©戸田尚伸/惑星をつぐ者)
ただし。
何度も述べているように、全9話の内容ではそこまで作り込むのは無理でした。
伏線は多いほど、回収されないほど作品が長続きしますからね~。
ワンピースなんて伏線だらけですもんね。
この少年がどのような能力を持っているのか?どのように人類を救うのか?までは、当然ながら描かれていません。
おそらくこの少年も、ナイブスと一緒に宇宙を旅することになったのだろうと予想されます。
そうなると少年の「謎」も絡んでくるので、コミックス10巻くらいまで軽く行けちゃいますよ。
本当に、つくづく「惜しい」作品です。
雑誌で連載する以上は、あらかじめ「○話で終了」って決められているパターンはほぼないでしょう。
だから同じ「全1巻」でも、計算した全1巻と打ち切りの全1巻じゃ全然違いますよね。
本作も、打ち切り作品によく見られる「駆け足での完結」になっています。
最後は無理やり決着をつけた感じが否めません。
それでも。
これだけ短期に連載が終了したジャンプ作品で、面白い(面白くなる)とわたしが感じたのは、後にも先にもこの「惑星をつぐ者」だけ。
いまさら何を言ってもこの作品の続きが描かれることはないでしょうが、自信を持って週刊少年ジャンプ史上最高の9週打ち切り漫画だと言い切れる「名作」です。
機会があれば、是非ご自身の目でその面白さを確認してみてください。
さて、そんな「惑星をつぐ者」は、わたしがふだん利用している電子書籍通販サイト「ebookjapan(イーブックジャパン)」で試し読みができます。
本作に興味を持たれた方は、下の公式サイトを覗いてみてください。
また、ebookjapan(イーブックジャパン)についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
よろしければ、併せて参考にしてくださいね。
